店舗・テナントの原状回復の基礎知識|工事の範囲や失敗しないための注意点を解説!

皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市磯子区を拠点に、神奈川県・東京都内・埼玉県・茨城県などで解体工事一式を手掛けている株式会社ワンツースリーです。


貸店舗・テナントから退去する時は、物件を元の状態に戻す「原状回復工事」を行う必要があります。これ自体は多くの借主様がご存じかと思いますが、実は原状回復を巡ってトラブルになるケースが少なくありません。


スムーズに退去するためにも、原状回復の範囲や費用については、オーナー様・借主様の双方が事前に理解しておくことが大切です。ここでは、貸店舗・テナントの原状回復の基礎知識について解説します。




■原状回復とは?



原状回復とは、賃貸物件から退去する際に、物件を入居前の状態に戻すことをいいます。原状回復の目的は、次の入居者が物件を快適に利用できるようにすることです。


長年使用していた物件は、各所が経年劣化しているでしょう。借主が汚損・破損させてしまった箇所もあるかもしれません。元々はなかった設備の追加や間取りの変更により、他者にとっては使いづらくなってしまっているケースもあります。こういった問題を解消し、次の利用者がスムーズに入居できるよう、原状回復を行う必要があるのです。


また、原状回復は単なる好意や礼儀として行うものではなく、法律で定められた「借主の義務」です(民法第621条による)。加えて貸店舗・テナントの場合は、居住用の賃貸物件とは異なり、借主が原状回復工事の費用を100%負担する必要があります。


居住用の賃貸物件から退去する場合は、物件内に劣化が見られたとしても、それが経年劣化の範囲であれば敷金が戻ってきます。借主に責任がある汚損・破損が見られる場合を除き、費用を請求されることは基本的にありません。なぜなら、毎月の家賃に補修費用が含まれており、それで原状回復費用を賄えるからです。


一方、店舗やオフィスといった事業向けの物件は、業種・業態に合わせた内装工事を行うケースが多く、原状回復費用を事前に計算しづらい傾向にあります。そのため、家賃に補修費用を含めて徴収するのではなく、原状回復を借主負担で行うことになっているのです。




■貸店舗・テナントの原状回復の基礎知識



貸店舗やテナントの原状回復では、注意しなければならないことがいくつもあります。まずは、原状回復の基本的な知識を押さえておきましょう。



・原状回復の範囲はどこまで?

原状回復の範囲は、原則として「入居後に手を加えた部分すべて」です。照明や家具、家電、什器、各種設備などはもちろん、壁紙から床材、コンセント・電気配線に至るまで、持ち込んだものや新たに設置したものはすべて撤去しなければなりません。まさしく「入居前の状態に戻す」わけです。


また、破損・汚損させてしまった部分も、元通り補修する必要があります。ただし、経年劣化によるものについては、原則として借主が原状回復をする必要はありません。


見方を変えると、入居前がどのような状態だったのかによって、原状回復で行うべきことも変わってきます。たとえば、入居前がスケルトン物件(骨組みだけ、コンクリート打ちっぱなしの状態)だったのであれば、退去時もスケルトンの状態に戻すのが原則です。


一方、居抜き物件だったのであれば、元からあった設備や内装材はそのまま残しておくことができます。撤去すべきものが多ければ、必然的に工事の手間や費用も大きくなるため、資金の準備やスケジュール管理にも気を配る必要があります。



・実際の原状回復範囲は賃貸借契約の特約によって決まる

上述した原状回復の範囲は、あくまでも「原則」です。実際には、「入居前の状態に戻す」以外の工事も行わなければならない場合があります。それに関わるのが、賃貸借契約の「特約(特約条項)」です。


特約とは、通常の賃貸借契約とは別に盛り込まれる、特別な契約条項を指します。特約では、原状回復の範囲や費用負担についても取り決めることが可能です。


そのため、特約の内容次第では、原則を超える範囲の原状回復工事を、借主の責任で行う必要が出てきます。これがトラブルの原因になりやすいのです。詳しくは後の項目で解説します。



・原状回復のガイドラインは適用されない

賃貸物件の原状回復を巡るトラブルは、昔から数多く発生してきました。そのため、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を出しています。居住用物件の原状回復の範囲は、このガイドラインに則って決められます。


しかし、貸店舗やテナントには、このガイドラインが適用されません。つまり、居住用物件と同じ基準で考えることができないのです。


そもそも、このガイドラインに法的な拘束力はありません。あくまでも、原状回復の範囲を決める際の指針です。実際の原状回復の範囲は、居住用であれ事業用であれ、賃貸借契約に従う必要があります。



・原状回復は退去日までに終えなければならない

原状回復工事は、原則として退去日までに完了させる必要があります。もし退去日までに原状回復を完了できなければ、追加の賃料が発生する可能性もあるため、注意しなければなりません。


オーナーとの打ち合わせや業者の選定にも時間がかかるため、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。遅くとも退去の1ヶ月前には着工すると考え、早めに準備に取り掛かりましょう。




■貸店舗・テナントの原状回復では、賃貸借契約の特約に注意!



貸店舗・テナントの原状回復では、入居者とオーナーの認識のズレなどによって、トラブルに発展するケースがよくあります。その原因となりやすいのが、賃貸借契約の特約です。


前述したように、貸店舗・テナントの原状回復には、原状回復のガイドラインが適用されません。そのため、原状回復の範囲や費用については、特約を含む賃貸借契約書の内容に従うことになります。


これを契約時からしっかりと理解できていればいいのですが、退去の段階になって「知らなかった」「思っていたのと違う」というトラブルが発生しやすいのが実情です。そこで、賃貸借契約の特約の中でも特にトラブルにつながりやすいものや、トラブルを防ぐためのポイントを確認しておきましょう。



・工事業者を自由に選べない場合がある

特約では、原状回復工事を行う業者が指定されていたり、「賃貸人(オーナー)が指定した業者に委託する」という内容が盛り込まれていたりするケースがあります。この場合は、借主に施工業者の選択権がありません。


もし相場に比べて高い業者を指定されれば、費用負担が重くなる可能性があります。また、費用が原因で思うように工事を進められず、退去日までに間に合わないリスクも生じます。



・オーナー側の都合で負担が大きい工事を求められる場合がある

原状回復工事の範囲は、特約で自由に決めることが可能です。場合によっては、借主にとって明らかに負担が大きく、「いくら何でもここまでやる必要はないでしょう?」という工事を要求されることもあります。要するに、オーナー側の都合による工事をさせられる場合があるのです。


たとえば、入居時にあった設備を撤去するよう指示されたり、壁紙や床材の張り直しを求められたりといったケースが考えられます。また、通路やトイレ、エレベーターといった共用部分の工事をしなければならないこともあるでしょう。これらに対応すれば借主の負担は大きくなり、常識的な責任の範囲を外れている可能性もあります。



・トラブル防止のために賃貸借契約書の確認を!

上記のような原状回復トラブルを防ぐためには、まず契約の段階で賃貸借契約の内容を十分に確認することが重要です。借主の側は、納得の行かない内容がある場合、そのことをはっきりとオーナーに伝えましょう。


逆にオーナーの側は、借主の負担が大きくなりすぎないよう配慮するとともに、賃貸借契約の内容を正しく説明し、了解を得る必要があります。両者が納得した上で契約すれば、後々のトラブルを防ぐことが可能です。


その上で、退去が決まった時も賃貸借契約の内容を改めて確認し、不明点や問題点があれば早めに指摘します。曖昧な点があるまま工事を進めると、高確率でトラブルにつながるからです。


実際のところ、契約書で決められた内容を覆すことは難しいのですが、オーナーとの交渉次第では借主側の要望が通る可能性もあります。たとえば、施工業者をより安価な業者に変更してもらったり、過剰と考えられる工事を免除してもらったりすることもできるでしょう。


また、次の入居者が同じ業種・業態であることを前提に、設備をそのまま残して居抜き物件扱いにするなど、コストを抑える工夫もいろいろ考えられます。契約内容をしっかりと確認した上で借主とオーナーが歩み寄り、お互いに最善を尽くすことが何よりも大切です。




以上のように、貸店舗・テナントの原状回復工事の範囲や費用は、賃貸借契約の内容に左右されます。トラブルを防ぐためには、賃貸借契約の内容をよく理解しておくとともに、状況に応じて借主・貸主と交渉することが重要です。


また、工事の流れやスケジュールなどを把握しておくと、スムーズに原状回復を行い退去することができます。その上で、工事を依頼する際は、原状回復の経験が豊富な専門業者に相談するといいでしょう。


株式会社ワンツースリーは、建設業許可の中でも「特定建設業許可(特-3)第80722号」を取得している、実績豊富な解体工事業者です。年間180件以上の解体工事を手掛け、幅広い現場に対応しています。


また、建築物石綿含有建材調査者をはじめ、解体工事に必要な数々の資格取得者が在籍しています。さらに、解体工事と残置物回収のどちらにも対応可能なので、別の業者に不用品回収を依頼する手間がかかりません。


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